
皆さんこんにちは!
ES保信株式会社、更新担当の中西です。
適切な基礎形式の判断は、地盤が何者かを知ることから始まります。日本は火山灰、沖積砂、粘土、埋立て、盛土…と土地の履歴が多様。調査を“儀式”で終わらせず、設計に生かす読み取りが肝心です。ここでは代表的な調査方法と、結果の“活かし方”を実務目線でまとめます。📑
代表的な調査方法
1. スウェーデン式サウンディング(SWS)
o 小規模で一般的。ロッド先端にスクリューを付け、荷重と回転数で貫入抵抗(換算N値)を推定。
o 長所:機材が小回り、コスト低、複数点で傾向を掴める。
o 短所:砂礫層や玉石混じりで過大評価の恐れ、地下水位の把握は限定的。
2. 平板載荷試験(PLT)
o 掘削底で鋼板を載せ、荷重-沈下量から地耐力(許容支持力度)を評価。
o 長所:実地盤の実測値が得られ、地業(砕石転圧)の効果確認にも有効。
o 短所:試験規模や載荷段階の設計意図の理解が必要。準備手間あり。
3. ボーリング調査(SPT併用)
o 中〜大規模。試料採取、標準貫入試験(N値)、地下水位、層序の把握に有効。
o 長所:層ごとの性状把握、支持層深度の確定。
o 短所:コスト高、点情報のため複数箇所が望ましい。
読み取りの勘所
• 層序の連続性:盛土→粘土→砂層→支持層の順序と厚さ。軟弱層の厚みが不同沈下リスクに直結。
• 地下水位:根切り時の湧水、コンクリートの品質、養生、凍上リスクに影響💧。
• N値のばらつき:同一敷地内でもムラは起きる。複数点調査の平均だけでなく最小値に注目。
• 液状化の可能性:砂地盤×高地下水位×地震動。粒度組成・締まり具合の評価を忘れずに。
調査→設計へのつなぎ方
• 基礎形式の選定:
o 表層に軟弱層が薄く、平均的にN>3〜5 → べた基礎/布基礎で対応。
o 軟弱層が厚く支持層が深い → 杭/柱状改良で支持層へ到達。
o 地下水位が高い・液状化懸念 → 砕石パイル/地盤改良+排水を検討。
• 仕様決定:
o コンクリートの設計基準強度、かぶり厚さ、防湿・止水計画、アンカー納まりに反映。
現場での“あるある”
• 調査点が少なすぎ:1〜2点では“地盤の気分”を読み違える。最低3点は欲しい。
• レポート読み飛ばし:図表だけでなく土試料写真・記録紙も確認。現場で色・臭い・触感の再確認👃。
• 設計と施工の断絶:設計意図が現場に届かず、過掘り/過転圧などで地盤を乱す。
ケース:盛土造成地の注意点🧱
• 盛土層が厚く、N値が上がらない場合は柱状改良×格子配列で不同沈下を抑制。
• 地下水位が浅いと掘削中の湧水が多発。ウェルポイントや集水井を計画。
• 粒度が粗でSWSが過大評価の恐れ→PLT併用で許容支持力度を実測。
チェックリスト ✅
☐ 調査点数・位置(通り芯基準)
☐ 地下水位と季節変動の確認
☐ 液状化・凍上の可能性評価
☐ 設計仕様への反映(Fc, かぶり, 止水)
まとめ:調査は“意思決定のためのデータ収集”
コストとリスクのバランスをとり、最悪シナリオ(不同沈下・湧水・液状化)を先回りで潰すのがプロの仕事です。次回は対策の切り札地盤改良工法を比較!🧠
追補:調査データの“読み替え”とリスク設計 🔎
• N値のばらつきは“地盤の性格”。平均ではなく最小値で基礎形式を当てはめ、部分補強(地中梁/改良)で差を吸収。
• 地下水位の季節変動は±0.3〜1.0m動く地域も。根切り時期と止水計画を季節で変える。
• 液状化簡易判定:粒度・締まり・水位・地震動。疑いがあれば砕石パイルやドレーンを検討。
• SPT試料の“臭い・色・手触り”:黒色で腐植臭→有機質土(沈下長期化)。灰白でサラサラ→洗掘注意。現場感覚を数値に重ねる。
ケース拡張:埋立地×地下水GL-0.8m
• 設計:柱状改良Φ80@1.8m格子+ベタ厚180。
• 施工:改良ミルクはW/Cと注入量を電子記録、出来形は深度ログで照合。
• 検証:平板載荷で許容支持力度を現地確認→OK。📑
調査→設計の“ギャップ”を埋めるメモ
• 設計者へ“最悪地点の写真/座標”を送ると議論が早い。
• 改良工法の比較表はコスト/m²・施工日数・騒音/汚泥・強度保証で並べる。📊
弊社では一緒に働く仲間を募集しています♪
皆さんこんにちは!
ES保信株式会社、更新担当の中西です。
家でも工場でもビルでも、「長持ちする建物」は足元の“見えない部分”がしっかりしています。基礎工事は、建物の荷重を地盤へ確実に伝え、地震や風、経年による変形から躯体を守るための最重要プロセス。ここが疎かだと、後からいくら仕上げを豪華にしても意味がありません。まずは全体像→目的→工程→失敗学→現場段取りの順で、実務に直結する視点で解説します。
基礎工事の主な目的
• 荷重の分散:柱・壁・床からの荷重を、基礎→地盤へ無理なく連続して伝える。
• 不同沈下の抑制:地盤の硬さムラによる傾き・ひび割れを防ぐ。
• 外力への抵抗:地震・風・凍上・乾燥収縮などの外力に対抗し、形を保つ。
大まかな流れ(住宅〜中規模を想定)
1. 地盤調査:土質・支持力・地下水位を把握(設計の出発点)
2. 地盤改良/杭:必要に応じて支持層まで強化・到達
3. 根切り・山留・排水:基礎の形に土を掘り、崩壊を防止
4. 地業:砕石敷均し・転圧・防湿シート・捨てコン
5. 墨出し:位置・高さ・芯を正確に記す✍️
6. 配筋・型枠:図面どおりの鉄筋と枠組みを“精度”で仕上げる
7. コンクリート打設:配合・受入・締固め・レベル管理
8. 養生・止水:温湿度管理、打継ぎと止水の健全化
9. 埋戻し・外構:排水勾配・犬走り・設備取り合いまで
“品質”の三本柱
• 設計:地盤データに基づく基礎形式・配筋・断面の妥当性。
• 施工:手順・精度・記録(写真/試験)。
• 管理:検査ポイントを外さない段取り(第三者/監理者の目)。
ケーススタディ:木造2階+ベタ基礎
• 地盤調査(SWS)でN値3〜5、地下水位はGL-1.6m。→ベタ基礎150mm+地中梁を採用。
• 雨季に着工のため排水計画を強化(集水井×2、ポンプ二重化)。
• 立上りは天端レベラーで±3mm以内を目標。アンカーは治具固定+三次元測定で“建て方ストレスゼロ”。
• 受入試験(スランプ・空気・温度・塩化物)と供試体をロットごとに採取。写真台帳は全景→中景→近接の三段で“見れば分かる”。
失敗あるあると未然防止
• 過掘り→捨てコン厚で辻褄合わせ:支持地盤を乱す恐れ。→丁張り・基準高の複数確認+オペ共有。
• かぶり不足:腐食・爆裂の原因。→スペーサー種類/ピッチの事前確認、写真で見える化。
• アンカー位置ズレ:上部構造の建て方に直撃。→治具/型枠へ一体固定と墨出しダブルチェック。
• 締固め不足:ジャンカ・コールドジョイント。→人員配置とバイブ計画、落下高管理。
現場段取りのコツ
• 天候窓を読む:梅雨・猛暑・寒波は配合・養生に反映️。
• 写真は“後で使える形”で:構造が隠れる前に全景→中景→近接。
• 近隣コミュニケーション:掘削・残土搬出・打設車の騒音と動線を先に説明。
Q&A(現場からのよくある質問)❓
• Q:布基礎とベタ基礎、どちらが安全?
A:地盤条件と上部荷重次第。ムラに強いのはベタ、点荷重が大きいなら地中梁併用を検討。
• Q:雨の日は打てる?
A:本降りは中止が原則。小雨なら受入試験重視+表面水管理で可だが、W/C上昇リスクに注意。
• Q:強度不足が出たら?
A:追加調査→設計協議。コア採取・反発度で実強度を評価し、必要なら補強・荷重制限へ。
チェックリスト(抜粋)✅
☐ 地盤調査の“最小値”で設計されているか
☐ 排水・養生の季節対策を計画したか
☐ かぶりとスペーサーの実物確認をしたか
☐ アンカー治具の固定と三次元測定計画
☐ 受入試験と供試体、写真台帳のテンプレ化
まとめ:基礎工事は“正解の積み重ね”。見えない品質を見える化し、工程ごとのキーポイントを押さえることが強い建物づくりの第一歩です。次回は出発点となる地盤調査を深掘りします!⛏️
追補:現場で“効く”運用ノウハウ集
• 意思決定の優先順位:安全 > 止水 > 構造 > 仕上げ > 工期 > コスト。迷ったらこの順に解く。
• 3点基準:測る・撮る・残す。測点は通り×距離×高さの3軸で統一し、写真ファイル名にも埋め込む(例:A-5_12.300_GL-0_配筋)。
• “可視化”の儀式:朝礼で今日の危険源3つと成功条件3つを黒板に。終礼では出来高1枚(上空写真/スケッチ)で共有。
• 工程遅延の芽切り:遅れは前日18時の資材・機械チェックで8割潰せる。生コンは車番×区画でダブルブッキングを回避。
• 近隣対策の黄金ルール:事前に“一番うるさい日”を正直に伝える。終わりに清掃+一声で体感満足度が跳ね上がる。
• 写真台帳の“勝ちパターン”:全景→中景→近接(スケール)の3枚1セット。是正前後の対写真は同じ構図で。
• ミスから学ぶ:過去案件の是正Top10を壁に貼る。新人は朝礼で1つだけ説明する係にして学習の場にする。
ミニ事例(戸建て×盛土造成地)
• 課題:造成後1年でN値ムラ。梅雨入り。
• 対応:砕石パイル+ベタ基礎+地中梁、打設前に集水井×2、ポンプ二重化。打設ブロック割を細かくしてコールドジョイントリスクを低減。
• 成果:出来形±許容内、不同沈下なし。近隣クレーム0件。
すぐ使えるチェックポイント ✅
☐ 最小値(N値/かぶり/強度)で考えているか
☐ 天気の窓を工程に織込んだか
☐ 座標と写真が後から追跡できるか
☐ 代替メニュー(止めても進む作業)を用意したか
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